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LSD搭載車のオイル管理ミスが招く、クラッチ焼き付きの実態とは?

~輸入車オーナーのためのトラブル回避術~

輸入車を愛する皆さんにとって、“駆け抜ける喜び”や“欧州仕込みのコーナリング性能”は何物にも代えがたい魅力でしょう。その陰で、高性能を支える機構のひとつであるLSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)は、適切なオイル管理がされていないと高額な修理費用を伴う故障を引き起こすことがあります。

この記事では、実際のトラブル事例やオイル選定のポイントを交えながら、「LSD搭載車がなぜ特別な注意を要するのか?」を解説。さらに、愛車を長く楽しむために信頼できるメンテナンス体制を整える方法についても触れていきます。

目次

LSDは、左右の駆動輪に回転差が生じた際、トルクを効果的に配分することでトラクション性能や旋回性能を高める装置です。特にBMW Mシリーズ、アウディのクワトロ、メルセデスAMGなど、走行性能に特化した輸入車には標準装備やオプションで採用されています。

LSDの主なタイプと特徴

タイプ 特徴 使用例
機械式(多板クラッチ式) 耐久性が高く、サーキット走行向け BMW M3(E92など)、日産GT-R
トルセン式 ギアによる自動制御。静粛性に優れる アウディA4クワトロ、レクサスRC
電子制御式 各輪の制動やトルク配分を電子制御 新型メルセデスAMG、VWゴルフR

中でも多板クラッチ式のLSDでは、オイルの質や劣化が直接的にクラッチ板の滑り・摩耗・焼き付きに関わってきます。

【事例①|ドイツ在住BMW M135iオーナーの体験談】

BMW M135i(F20)でサーキット走行を頻繁に行っていたオーナーが、LSDオイル交換をディーラー任せにしていたところ、純正指定外のオイルが使用されていたことが判明。その結果、内部のクラッチ板が焼き付き、異音とともに旋回時の異常挙動が発生。ディファレンシャルのオーバーホールで約28万円の出費となりました。

【事例②|日本国内・A45 AMGの例】

ハイパフォーマンスを誇るA45 AMGでも、指定のLSDフリクションモディファイアを含まないギアオイルを使用していたことが原因でクラッチ板の当たり不良・焼き付き症状が発生。Dレンジでの出足に違和感を覚えたため点検したところ、クラッチ交換+ユニット調整で35万円以上の修理費用となった事例があります。

● LSD搭載車に必要なオイル条件:

  • LSD対応表記あり(Limited Slip対応)

  • フリクションモディファイア添加(※クラッチ式LSDは必須)

  • 適正粘度・高温耐性(サーキット走行を考慮する場合)

● 交換目安(走行状況別):

使用状況 交換サイクル
通常走行(街乗り中心) 15,000〜20,000km
ワインディング主体 10,000〜15,000km
サーキット使用あり 5,000kmごと推奨

部品情報

■ LSDオイルのおすすめ品(参考)

商品名 特徴 備考
Motul Gear 300 LS 高温耐性・LSD対応 サーキットユーザーにも人気
Red Line 75W90 NS + フリクションモディファイア 高い滑り性能を確保 輸入車LSDによく使われる組合せ
Castrol Syntrax Limited Slip 75W-140 純正採用例あり BMW Mモデル等での使用実績

※お車の仕様に合わせて、整備士と相談のうえご使用ください。

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