Peugeot / Citroën

プジョー308のAdBlue警告!スキャンツール診断

プジョー308の走行

排気ガス浄化を担うBlueHDiと尿素水(AdBlue)供給の構造

プジョー 308(T9型・1.5L/2.0L BlueHDiディーゼル搭載車)は、優れた環境性能と力強い走りを両立したクリーンディーゼルモデルです。

排気中の窒素酸化物(NOx)を削減するため、排気マフラー前方に尿素水(AdBlue)を噴射して化学反応を起こす「SCR(選択的触媒還元)システム」を備えています。車体後方フロア下に配置されたAdBlueタンクモジュールには、尿素水を圧送するサプライポンプ、凍結防止用ヒーター、液面レベルセンサー、圧力センサー、そして統合制御回路が凝縮されて組み込まれています。

エンジンECUが圧力不足エラーを判定するロジック

プジョー308で突然「UREA警告灯」が点灯し、再始動不可カウントダウンが作動する要因の多くは、尿素水の供給圧力不足にあります。

イグニッションONまたはエンジン始動時、システムはサプライポンプを駆動させ、配管ライン内の圧力を「規定値(約5.0〜6.0bar前後)」まで昇圧させようとします。しかし、ポンプモーターの機械的劣化、あるいはタンクキャップ通気弁の閉塞による負圧化、ノズル周辺での尿素結晶化による流路抵抗の増大が起きると、規定時間内に昇圧ターゲットに到達しません。エンジンECUはこれを「供給圧力の異常(P20E8)」と検出し、環境法規に基づく始動制限モードを起動させる仕組みです。

故障の主な要因 トラブルの具体的な内容 効果的な対応策
タンク内サプライポンプ不良 昇圧能力が低下し、規定値(約5〜6bar)を維持できない 対策型AdBlueタンクAssy交換および初期学習
タンクキャップ通気弁の詰まり タンク内部が負圧状態となり、ポンプ圧送が阻害される 対策型ブリーザー付きタンクキャップへの交換
尿素インジェクターの結晶化 ノズル先端に尿素結晶が堆積し、適正な噴射が遮られる 噴射インジェクターの脱着清掃または交換

目次

【ケース|プジョー 308 SW BlueHDi T9 2017年式】

  • 症状:走行中に突然「UREA」マークとスパナマーク、エンジンチェックランプが点灯し、マルチファンクションディスプレイに「排気システム異常:1100km後に始動不可」と表示された。

  • 診断結果:SCRサプライポンプの圧力保持不良による供給ライン圧力低下(実測値約2.8bar止まり)。

  • DTCコード:P20E8 00(尿素水圧力不足 – 圧力が低すぎる)

  • 処置内容:対策版AdBlueタンクAssy新品交換、対策タンクキャップ交換、信頼できるプロの整備工場にてAUTEL MaxiSysを用いたSCRシステム初期化・学習値リセット・アクティブテスト。

ライブデータ測定とトラブルシューティングの要点

警告灯が点灯した際、部品の単体良否を推測だけで特定することは極めて困難であり、AUTEL MaxiSysをはじめとする高機能な汎用スキャンツールが必須となります。

スキャンツールをOBD2ポートへ接続したら、エンジン制御モジュール(DCM)のライブデータ項目を展開します。最重要パラメーターである「Urea Pressure(尿素水実圧)」をモニタリングし、アイドリング中や負荷変動時に規定値である約5.5bar前後を安定して保持できているかを確認します。この数値が3.0bar前後で頭打ちになる場合や激しく変動する場合は、ポンプ側の昇圧不良が濃厚です。あわせて「Urea Pump Duty Cycle」や「Exhaust Gas Temperature」を照合することで、電気的な断線トラブルか、機械的な油圧・水圧系統の機能不全かを切り分けていきます。

スキャンツールが必須となるキャリブレーション手順

T9型308の尿素タンクユニットを新品に交換した場合、ハードウェアを物理的に組み付けただけでは、メーター内のカウントダウン表示や警告灯は自動的にリセットされません。

ECU内部には「過去のエラー履歴」および「旧ユニットの劣化補正パラメーター」が残存しているため、専用の特殊機能を備えたスキャンツールによる学習値リセット作業が不可欠です。安定化電源を接続して電圧降下を防いだ状態で、以下のプロセスを確実に実行する必要があります。なお、整備費用は部品代や工賃によって前後しますが、「十数万円前後」がおおよその目安です。事前に信頼できる専門店へ確認してみましょう。

  1. 部品交換登録(SCR Component Replacement):新しいタンクユニットを制御ECUへ登録する。

  2. ライン充填(Denox Line Priming):新設した配管内のエア抜きを行い、尿素水を圧送充填する。

  3. アクティブテスト(Actuator Test):スキャンツール側からポンプを強制駆動させ、漏れや作動音を確認する。

  4. 全モジュールDTCオールクリア:各ユニットに波及した関連エラーコードを完全消去する。

走行パターンによるモニタリングと完了確認

スキャンツールでの設定作業が完了しても、即座にすべての警告フラグが解除されるとは限りません。

SCR触媒が活性化温度に達するまで一定の走行条件(市街地および一定速巡航を含む20〜30分程度のロードテスト)を行い、NOx排出濃度とインジェクター噴射要求値が適合していることをECUが自己検証する必要があります。すべての判定ロジックがクリアされて初めてカウントダウンが消灯します。目視や簡易リーダーだけでは完結しない複雑なシステムだからこそ、適切な設備を持つ整備工場へ相談することが確実な解決への近道となることでしょう。

プジョーならではの力強いディーゼル走行を長く維持し、尿素タンクの持病による突然の始動不能制限を防ぐための点検・整備のご相談は、お近くの[輸入車メンテナンスサービス]へご相談ください。

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