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旧世代BMWにおけるエンジン本体のメンテナンス【前編】

新車から10年以上が経過すると、基本的な消耗品以外にもエンジン本体の劣化も出始めます。その代表的な事例がヘッドガスケットからのオイル漏れ。これを放置しておくと、重大なトラブルに繋がってしまうことも。この記事では、エンジン本体のメンテナンスについて解説します。

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新車から10年落ち以上のドイツ車では走行10万㎞オーバーのクルマが多い。もちろんドイツ車のエンジンはタフなので10万㎞くらいでダメになってしまうことはないが、それはきっちりとメンテナンスがされていることが前提となる。
エンジン本体のメンテナンスとしてはタペットカバーパッキンの交換くらいで、周辺に備わる補機類の交換に比べると手を入れる機会は少ない。だが、走行距離が増えてくるとヘッド回りのメンテナンスが必要になってくる。
症状として多いのはヘッドガスケットからのオイル漏れ。シリンダーブロックとヘッドの間にあるガスケットが経年劣化によりグザグザに腐ってしまい、そこからオイルが漏れ出してしまう。ラジエターのサブタンクにある冷却水にオイルが混入して茶色に変色している場合は、ヘッドガスケットが劣化している証拠だ。
ヘッドガスケットは直列エンジンほど劣化しやすい傾向にあり、6気筒なら1番か6番といったように両端からオイルが漏れることが多い。オイル漏れがひどくなり、高温になったエキゾーストマニホールドに付着すると煙を発生させることもあるから、早めに対処しなければならない。エンジン内部においても油圧が低下して各部の負担が大きくなる。
ヘッドガスケットを交換するときにはヘッドのみを降ろして、劣化したガスケットを換える。このヘッドガスケットの交換がオーバーホールだと思われることが多いのだが、それは違う。ヘッドガスケットのみの交換は単なる消耗品の交換でしかないのだ。
ヘッド回りのメンテナンスポイントとしてもう一つ重要なのが、バルブステムシールの交換。原因はオイル下がりで、マフラーから白煙が大量に出ていたり、点火プラグをチェックしてみてオイルで湿っているようであればオイル下がりが発生している可能性が高い。
バルブステムシールは、バルブに付着したオイルが燃焼室に下がってこないようにするためのゴムシールで、走行10万㎞くらいで交換する必要がある。これを放置しておくと燃焼室にスラッジが溜まりエンジンに大きなダメージを与えるだけでなく、高価な触媒を壊す原因にもなる。ただし、バルブステムシールを新品にしてもバルブガイドの磨耗により歪みが発生していたら、シールを交換するだけでは意味がない。バルブの開閉が正確にできない状態では、吸入・圧縮・爆発・排気を効率良く行うことができないからである。そのため入念に点検をしてバルブガイドを交換しておく必要がある。
ヘッドガスケットの交換のみというのは、先にも述べた通りオーバーホールとは言わない。80年代以降に設計されたエンジンは、オイル管理さえキッチリ行っていれば、カムが減るということはほとんどなくなった。オイルのクオリティ向上とともに、エンジン自体の耐久性も飛躍的に向上しているからである。
エンジンヘッド回りの修理は、バルブステムシールの硬化やバルブガイドの摩耗、ヘッドガスケット抜けといったものがほとんどで、オイル漏れが絡んだものが中心になっている。古めのクルマに多いタイミングベルトを使用するエンジンでは、コマ飛びなどが原因でバルブとピストンが干渉したためにオーバーホールを行うということもあったが、それも今は減少傾向にある。

エンジンのシリンダーとヘッドの間にあるヘッドガスケット。劣化するとオイル漏れや水漏れを引き起こす。直列エンジンに多い症状だ。
この小さなゴムパーツがバルブステムシール。これが劣化するとバルブに付着したオイルが燃焼室まで下がってきてしまう。

ヘッドのオーバーホールは
信頼できるメカニックに依頼すること

では、オーバーホールの本当の意味とは何か。明確な基準はないのだが、やはりバルブ回りの加工や面研、バルブタイミングの調整、そして入念な洗浄を行なうことにある。ヘッドガスケット周辺からのオイル漏れが激しかったエンジンは、ヘッドの面研作業で歪みを取ることで、ガスケットが本来のパフォーマンスを発揮できオイル漏れを起こすことはほとんどなくなる。同時に張力が必ず低下するヘッドボルトにも新品を奢れば、オイル漏れが発生する確率をさらに低下させることが可能だ。
オイル下がりには、バルブステムシールやバルブガイドの交換だけではなく、バルブシートカットも行うことで隙間の発生しない確実なバルブ開閉を実現できる。このバルブのシートカットとは、純正のバルブの縁が2段の場合、機密性を高めるために3段に加工するといったもの。もちろん、このバルブの縁の角度に合わせてヘッド側も削る。これによりバルブの当たり面の密着度が増し、高い圧縮力を生み出すことが可能になる。そのため、ヘッド面研加工と同時にバルブシートカットを行うのが、総合的に判断すると賢い選択といえるだろう。
バルブ回りが正常に作動するようになったら、それを動かすバルブタイミングを取り直す必要がある。バルブタイミング調整とは、文字通り、バルブの開閉タイミングを決めること。吸気だけを例に取れば、ピストンが下がっている時に吸気バルブを開けなければ、効率良く混合気を吸い込むことができない。ピストンが下がる負圧が、吸気の最大要因となるためだ。
この善し悪しを決めるのがバルブタイミングで、チェーンでもベルトであっても伸びが生じるために徐々にずれてきてしまう。そのため、オーバーホール時には、正規のタイミングに調整することが必須なのである。また樹脂製のガイドレールが磨耗していることもあるので、このタイミングで新品に交換しておくと安心。ガイドレールが破損してしまうトラブルも発生しているので注意したい。
ヘッドのみとはいえ、エンジンのオーバーホールというのはメカニックの経験と技術が重要になる。部品の組み方やちょっとした調整にも、やはりノウハウがあるのだ。決して安い費用ではない作業なので、信頼できるメカニックに依頼するようにしたい。

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古めのクルマではバルブタイミングが狂っている場合も多いので、エンジンヘッドのオーバーホールのタイミングで調整しておくのが望ましい。

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