アルミニウム製多リンクサスペンションの構造
メルセデス・ベンツCクラス(W205型)のフロントサスペンションには、路面からの衝撃をいなし、しなやかなハンドリングを実現するために複雑なリンク機構(マルチリンク/4リンク式)が採用されています。
軽快なフットワークを生み出すためにアーム類の多くがアルミニウム製となっていますが、各アームの接続部分には、振動を吸収するための「ゴムブッシュ」や、滑らかな動きを支える「ボールジョイント」が数多く組み込まれています。これらが経年劣化することで、足回りからの異音トラブルへと発展します。
日本のタフな走行環境によるブッシュへのストレス
日本の道路は舗装が綺麗な反面、速度抑制のための段差、踏切、うねりのある路面が多く、さらにストップ&ゴーの繰り返しによって、サスペンションは常に激しく上下・左右に揺さぶられています。
W205型は先代モデルに比べて車体が軽量化されているものの、コーナリングやブレーキング時に足回りにかかる荷重は非常に大きく、ドイツ本国のような高速巡航主体の環境に比べ、日本の低中速域での細かな街乗りはゴムブッシュをじわじわと痛めつける原因になります。
目次
走行中に発生する異音の種類と疑うべき原因箇所
段差を越えるときの「コトコト」「ゴトゴト」音
小さな段差やマンホールの凹凸を通過した際に、足元から「コトコト」と響くような異音が発生している場合、最も怪しいのは「スタビライザーリンク(スタビリンク)」のボールジョイント、または「ロアアーム(コントロールアーム)」のブッシュ劣化です。
特にスタビリンクのジョイント部は、内部のグリスが漏れ出して金属同士が直接擦れ合うことで、初期症状として小さな打音を発生させます。これを放置すると、徐々に音が大きくなり、ステアリングにまで微振動が伝わるようになります。
ハンドルを切ったときや制動時の「ギシギシ」「ジワジワ」音
据え切り(停車した状態での操舵)時や、ブレーキを踏んで車体が前傾した瞬間に「ギシギシ」「ミシミシ」といった擦れるような音がする場合、フロントの「ラジアスアーム(スラストアーム)」の大型ハイドロブッシュ(封入ゴム)に亀裂が入っている可能性が高いです。
このブッシュは加減速時の前後方向の強い力を受け止めていますが、ゴムが裂けて中の封入オイルが漏れ出してしまうと、ゴム本来のたわみが失われて異音を発生させます。また、アーム先端のボールジョイント部のブーツが破れ、雨水が侵入して錆びることで同様の不快な異音が出ることも定番です。
安心の乗り味を取り戻すための点検方法と整備メニュー
1G締め付けとアームのセット交換を推奨する理由
整備の現場でブッシュ類の劣化を診断する際は、車両をリフトアップしてタイヤを浮かせた状態でタイヤを揺らしたり、バールなどでアームをこじってガタツキを確認します。しかし、本当に負荷がかかった状態を再現するため、接地状態(1G状態)でのブッシュの変形具合を目視チェックすることが最も確実です。
修理の際、異音が出ている一箇所(例えばスタビリンクだけ)を交換しても、他の一緒に動いているアーム類も同じように劣化しているため、すぐに別の場所から異音が出始めるケースがほとんどです。そのため、走行距離が5万キロ〜8万キロ前後に達している場合は、左右のフロントアーム(ロアアーム、ラジアスアーム)をセットでリフレッシュすることをおすすめします。
交換後のアライメント調整の重要性
サスペンションアーム類を交換した後は、タイヤの取り付け角度が必ずミリ単位でズレてしまいます。そのまま走行を続けると、直進安定性が悪化したり、タイヤが異常に片減り(偏摩耗)したりする原因になります。
そのため、アーム交換の仕上げには、必ず「4輪トータルアライメント調整」が必要です。数値をメルセデス・ベンツの規定値へと正確に補正することで、新車時のようにビシッとまっすぐ走り、滑らかに曲がるベンツ本来の上質な乗り味が蘇ります。
足回りからの違和感や異音が気になり始めた方は、お近くの[輸入車メンテナンスサービス]までお気軽にご相談してみませんか?







