エンジン不調の原因になりやすいのが燃料ポンプ。ドイツ車では消耗品として定期的に交換しなければいけません。ここでは燃料系のパーツの仕組みを簡単に解説しながら、なぜメンテナンスが必要なのかを紹介します。クルマによっては高価な部品ですが、構造を知れば予防整備が必要な意味も理解できます。
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目次
燃料ポンプには車種や年式によって2つのタイプがある
燃料ポンプは消耗品であるため定期的に交換していかなければならないのだが、その構造を知っておくとメンテナンスをする意味も納得できる。ドイツ車の燃料ポンプには、W124やW140など床下に吊り下げられるようにして設置されているものと、W211以降では燃料タンク内に設置されるインタンク式がある。吊り下げ式はポンプが1つの場合と2つの場合があり、車種やグレードによって異なる。自分のクルマの燃料ポンプがどのタイプなのか、どこに設置されているのかを把握しておくことも大切だ。
燃料ポンプという部品があることは知っていても、具体的にどんな構造でどんな仕事をしているのかを知らない人は多いと思う。
燃料ポンプとは文字通り燃料を送り出すためのポンプ。現在主流の電動式燃料ポンプは、筒状の内部全体がガソリンで満たされている。ちょっと意外なことに、モーターの永久磁石も電磁石も、接点となるブラシ部分もすべてガソリン浸けの状態。細長い金属ケースの内部は、完全に燃料で満たされているわけだ。そしてケース筒の内壁との間で、ローラーの遠心力を利用してガソリンを送り出している。ガソリンの状態や異物の混入などによって大きなダメージを受けてしまうことは容易に想像できるだろう。
燃料ラインは、ガソリンタンクから燃料をデリバリーするホースが直接燃料ポンプへ繋がり、次にフューエルフィルターがセットされる。順番が逆のような気もするが、燃料ポンプに影響があるような大きなゴミはタンク内部の吸い込み口にあるフィルターによって取り除かれる。フューエルフィルターは目の細かいインジェクターを保護するためにあると思っていい。フィルターから出た燃料は、インジェクターが取り付けられるデリバリーパイプへと送られる。ここから必要な量だけがインジェクターによって噴射され、残りはリターンラインから燃料タンクへ戻るという仕組みになっている。つまり、アクセルを全開にした状態でも不足しないだけのガソリンが常に供給されていて、通常の状態では大半が使われないままタンクへと戻り、循環しているということだ。
冬場などに、クルマを車庫から出して走り始めてしばらくすると、ガソリンのメーターが少し上に上がったという経験をしたことはないだろうか? これはエンジンの熱で温められたガソリンが循環することで、燃料タンク内部のガソリン温度が上昇して体積が増えたことによるもの。ガソリンの体積は温度によってかなり変化するので、タンクの形状によってはよく見ているとメーターの針が動くことも珍しくない。それほどエンジンの熱による影響を受けるわけで、真夏に残り10ℓといった状態で渋滞にでも突入すれば、相当な温度まで上昇してゴムホースや燃料ポンプなどに負荷をかけてしまうことは想像できるだろう。「ガソリンは常に半分以上をキープ」というのには、こんな理由もある。
現在主流の燃料ポンプは
インタンク式
インタンク式のポンプは通常ならばタンクの下部からホースによって引き出す燃料を、タンクの上部から加圧された状態で引っ張り出せるため効率的だ。従来からの床下設置に加えて部品の点数を抑えることもできるため、最近ではほとんどがこのインタンク式となっている。以前はインタンクのポンプと外側にサブポンプという方式も多かったが、最近は燃料ポンプの性能が高くなり排出量も増えたため、インタンク一機のみというクルマが主流となった。
インタンク式の大きな特長は、筒状のポンプが縦に立った状態で取り付けられること。下側の吸い込み口部分にはフィルターがセットされる。ポンプを交換する場合には、ユニットごと新しくするやり方の他に、燃料ポンプ部分だけを新品にしてフィルターやステーは以前のものを組み付けるというやり方もあるが、この場合はフィルターがタンクの中で外れてしまい、空気を吸って燃料が上がって来ないというトラブルも実際に発生しているので、確実な作業が求められる。節約効果と比較してよく検討したいところだ。
最新のモデルとなると、燃料ポンプもモジュール化が進んでいる。これまでは別体で取り付けられていた燃料ゲージ用のレベルセンサーや燃料フィルターなどが一体構造になり、セットでないと交換できないというケースも増えつつある。消耗品であることを考えると合理的とは言えないが、作り手の都合で考えれば効率的なのだろう。このようなモデルでは部品代が想像以上に高いこともよくあるので、事前に確認してメンテナンスの計画に入れておきたい。
このように燃料ポンプは種類によって構造が異なるが、トラブルの症状としてはどちらも似たようなもの。突然エンジンがかからなくなったり、フル加速の時に息継ぎするなど出先で発生するとやっかいな症状ばかり。作動音も一つの目安にはなるが、音が大きいというだけでは決定的とは言えない。断続的に音が変化したり一定でない場合はかなり劣化が進んでいる証拠なので、この場合はすぐに交換してしまおう。また、安くはない部品ではあるが、出先で止まってしまうとレッカー代などの負担も大きく手間もかかるので、車齢が10年になったら走行距離とは関係なく交換するのがお勧め。部品も純正品かボッシュ製のOEMパーツに限定しておいた方がいいだろう。
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