輸入車のAT(オートマチックトランスミッション)に関連する実際のトラブル事例をいくつか紹介します。いずれも整備現場で頻発している典型例で、油温管理や定期的なATF交換の重要性を物語るものです。
目次
【事例1】メルセデス・ベンツ Cクラス(W204)|7Gトロニックに異音
症状:
走行中に「ウィーン」「ゴロゴロ」といった異音が発生。変速はするが滑る感覚あり。
診断結果:
ATのフロントポンプに内蔵されている真鍮製のリングが摩耗・変形。
金属片がAT内部に混入し、クラッチディスクの一部が焼き付き始めていた。
修理内容:
- トルクコンバータ交換
- フロントポンプ対策品へ交換(真鍮→ベアリング)
- 部分オーバーホール+ATF全量交換
費用:約40万円(部品+工賃)

【事例2】BMW 3シリーズ(E90)|6速ZF製ATが3速固定に
症状:
ある日突然、Dレンジで走行中に3速固定(エマージェンシーモード)となり、メーターパネルに「トランスミッション異常」の警告。
診断結果:
バルブボディ内のソレノイドバルブ不良。
長期間ATFを交換していなかったため、スラッジの蓄積がソレノイドの動作不良を引き起こしたと推定。
修理内容:
- バルブボディAssy交換
- ソレノイド交換
- ATF+フィルター交換
費用:約25万円(BMWディーラーで対応)
【事例3】アウディ A6(C6)|ティプトロニックATの衝撃変速
症状:
2速から3速への変速時に「ガクッ」と大きなショック。変速は正常だが違和感が続く。
診断結果:
長年ATF未交換。内部クラッチの一部が摩耗し、油圧制御が不安定に。
電子制御バルブではなく、機械的摩耗によるものと判断。
修理内容:
- リビルトATユニットへ交換(オーバーホール済品)
- フルード・トルクコンバータ含め全交換
費用:約45万円(専門ショップで対応)
【事例4】フォルクスワーゲン ゴルフ6|DSG(乾式7速)でギクシャク走行
症状:
1速発進時に「ガクッ」と強いジャダー、特に信号待ちからの再発進時に顕著。
診断結果:
DSGのクラッチパックが摩耗し、温度が上がると制御しきれなくなる状態。
走行距離6万kmだが、ATF未交換。
修理内容:
- クラッチパック交換
- メカトロニクスユニット再学習
- ATF交換
費用:約18万円(VW正規サービス工場)
【事例5】ポルシェ カイエン(958)|アイシン製6速ATの突然停止
症状:
1速から2速、または3速から4速への変速時に強い衝撃。「ドンッ」という感じのシフトショック。
診断結果:
バルブボディ内にあるK1スプリングが破損。変速時に油圧の制御が乱れ、ショックが発生。
また、ATFが黒ずんでおり長期間交換されていなかった。
修理内容:
- バルブボディ分解洗浄+対策スプリング組み込み
- ATFとフィルター交換(高性能タイプ使用)
- メカトロニクス再学習
費用:約18万円(専門店で分解整備)
【事例7】アルファロメオ ジュリエッタ|乾式デュアルクラッチTCTのギクシャク変速
症状:
渋滞時の低速走行で、1速→2速のつながりが不自然。発進時にジャダー発生。
診断結果:
TCTクラッチが片摩耗しており、発進時のトルク伝達にムラがある。
また、クラッチアクチュエータ内のグリスが硬化し、スムーズに動作しなくなっていた。
修理内容:
- クラッチパック交換
- アクチュエータ分解清掃+グリスアップ
- TCTユニット再学習(診断機使用)
費用:約20万円(アルファ専門チューニングショップ)
【事例8】ジャガー XF(X250)|ZF製6速ATのすべり・加速不良
症状:
発進加速が鈍く、途中で回転だけ上がる。加速が滑って力強さがない。
診断結果:
ATF劣化とクラッチパック摩耗が進行。冷間時は正常だが、温まると滑りが発生。
油温センサーの読み取り異常もあり、適正な制御ができていなかった。
修理内容:
- クラッチパック交換(分解オーバーホール)
- センサー交換
- ATF全量交換+油路洗浄
- ソフトウェアアップデート
費用:約38万円(ジャガー専門整備工場)
ポイントまとめ
これらの事例に共通して言えるのは:
- 長期ATF未交換車両でトラブルが多発
- クラッチやバルブボディ関連の部品が弱点
- 社外パーツや対策品の導入で再発防止が可能
- 専門店での診断・整備が高い精度と信頼につながる
あなたのAT、今のままで大丈夫ですか?
愛車の走りを支えるAT。
見えないところで劣化が進んでいるかもしれません。
正しい知識と適切な対策で、安心・快適なカーライフをこれからも長く楽しんでいきましょう。
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