エンジンよりも手ごわい?輸入車のAT(オートマチックトランスミッション)事情
エンジンやエアコンに次ぐ高額修理項目として知られるAT(オートマチックトランスミッション)。
「バックに入らない」「3速固定になった」「ギアが滑る」といったトラブルに、一度でも遭遇したことがあるオーナーも多いのではないでしょうか。
ATのトラブルは、機械的な摩耗か電子制御系の不具合かによって対処法が大きく異なりますが、いずれにしても共通して重要なのが「ATF(ATフルード/オイル)の管理」と「油温のコントロール」です。
目次
なぜATは壊れるのか?原因は「熱」と「劣化」
ATは数百点のパーツから構成される非常に精密な機構で、基本的には消耗部品の集合体。
つまり、どこかのタイミングで必ずメンテナンスかオーバーホールが必要になる部位です。
ブランド別にみても、メルセデスではオーバーホール志向、BMWやポルシェではリビルトや中古ATに載せ替えるケースが多いなど、整備スタイルに特徴が見られます。
その中で、ATトラブルの最大の要因とされているのが「油温の上昇」です。
一般的に、ATFの理想的な作動温度は80〜90℃。これを保てれば、例えばメルセデスの機械式ATで16万kmの寿命が期待できるとも言われています。
ところが、100℃を超えるような高温状態が続くと──
- ATFの性能低下
- カーボンの蓄積
- ゴムシール類の硬化
- クラッチの滑り
といったトラブルの温床になります。
さらに、AT内部のクラッチディスクやシールは高温に弱く、摩耗や油圧低下を引き起こして最終的には変速不良、走行不能などの重大な故障につながるのです。


【トラブル事例紹介】メルセデス・ベンツ 7Gトロニックの注意点
7速AT「7Gトロニック」では、走行中に「ウィーン」と異音が出るトラブルが報告されています。原因はフロントポンプ内の真鍮リング不良。
この症状を放置すると──
- クラッチディスクの焼き付き
- トルクコンバータ内のディスク剥離
- 高額なバルブボディの交換(コントロールユニット一体構造)
といった数十万円単位の修理が必要になるケースも。
このような実例からも、異常を感じたらすぐにプロに相談することの重要性がわかります。


ATの寿命を延ばす3つの対策ポイント
- ATF(オイル)交換は定期的に
- 輸入車の場合、「ATF無交換」というメーカー指定でも、6〜8万kmごとの交換が推奨されることが多くあります。
- フィルターも同時交換を忘れずに。
- ATクーラー(冷却系)の点検を忘れずに
- ATFの冷却はラジエターと連動しているため、水温が上がるとAT温度も上昇します。
- 特に高年式のドイツ車では、社外ATFクーラーの後付けも効果的。ただし、信頼できる専門店での施工が前提です。
- 異音や変速の違和感があれば即チェック
- トラブルの兆候を感じたら、走行を続けずに早めの点検が大切。
- 小さな異常のうちに対処すれば、大きな出費を防ぐことができます。